泥酔女連れ去り男の告白

犯罪

刑法犯の検挙人員が年々減少を続ける一方、再犯者率の上昇が問題視されている。なかでも注目されているのが性犯罪者の再犯である。平成27年版犯罪白書によれば、再犯者の中でも性犯罪を繰り返す者の割合は67.4%と高い。性犯罪の再犯については、刑務所内での認知行動療法に基づく指導の強化や出所後の医療行為による治療などが議論されているが、まだ効果的な対策は確立されていない。11月6日、横浜地裁で、電車内で寝込んだ女性を自宅アパートに連れ込んで監禁した罪などで懲役15年の判決を受けた男が、接見を重ねたフリーライターの高橋ユキ氏に語っていた言葉からは、対策の難しさが浮き彫りになる。高橋氏がリポートする。

 

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 横浜拘置支所の面会室。ここに「出たらまた絶対にやってしまう」と繰り返す男がいる。

 

 その男、栗田良文被告(36)が神奈川県警・相模原署に逮捕されたのは2016年の6月。酔って電車内や駅構内で寝込んでいた女性を、介抱するフリをして睡眠薬を飲ませて自宅に連れ帰り、わいせつ行為を繰り返していた。女性たちは電車や駅のホームで酔っ払っていたはずが、気づいたときには見知らぬ男の家にいたのである。最終的に9人の女性に対する強制わいせつや監禁、準強姦や強姦などの罪で起訴された栗田被告だったが、一連の行為は「セックス目的」ではなかったと主張した。では、何が目的だったのか。それが明かされたのは、同年9月に横浜地裁で開かれた初公判の罪状認否のときだった。彼は消えそうな声でこう述べたのだ。

 

「目的は髪の毛を触るってことで……そこの事実を変えることはできない」

 

 弁護人も冒頭陳述で驚くべき事実を明かした。

 

「彼は18歳から33歳まで働きながら、女性の髪の毛を触りたいと、土日になっては女性を探しに行って、自宅に連れ帰り、髪の毛を触るということをもう何百回もずっとやっているんです。それが実態です」

 

 髪の毛への執着? 私は栗田被告に直接話を聞くため、約10ヶ月にわたり、横浜拘置支所での面会取材と文通を重ねた。身長180センチ近い大柄な栗田被告は、肩まで伸びた髪をゴムで無造作に結び、口を尖らせて喋る。何度か面会すると、私との会話に慣れたのか、敬語を使わなくなった。見る人によっては“ニヤけている”と思うような笑顔を見せる。

 

 公判に提出された証拠や彼の話によると、栗田被告の父親は分からない。母は彼を産んですぐに施設に預けた。そして5歳のとき、里親に引き取られた。

 

「施設の外は新しい世界が広がってて、全く風景が違うんだよね。それで髪の毛に興味を持った。ロングの黒髪が好き。だけど当時はなんとなく髪の毛に興味があるという感じ。姉が髪の毛が長かったんでよく触ったりしてた」

 

 彼は小学校3年生のときに、黒髪ロングの同級生の髪の毛を無理やり切った。「これが始まりじゃないかな」と栗田被告は自ら振り返る。姉や同級生、そして街中、あらゆる女性の髪の毛に関心を向けた。栗田被告によれば「触ってみたい」という気持ちは小学校時代にエスカレートし「欲しい」に変わった。そうして同級生女子の髪を切り始めたのである。加えて、死体への興味も生まれた。

 

「サスペンスドラマとか、あるでしょ。あれを親と一緒に観てると最後に死ぬシーンがある。それで興味を持って。なんでかわかんないけど、その興味が『寝てる女性』に変わっていった。寝ていると抵抗がないじゃないですか。ドラマで女性が仰向けに倒れてるところに興奮する。バタッと倒れれば、髪がバサっと動く」

 

 サスペンスドラマで性の目覚めを迎えた栗田被告は“意識のない女性の髪の毛”に興奮するようになった。

 

「頭で女の子の死体を想像するの。テレビは、サスペンスドラマを録画して、それで死ぬシーンだけスローで再生して。そして『擦り付け』る。そうしないと快感を得られなかった」

 

 高校生のころからは外でも「擦り付け」を始めた。電車のドア近くに立ち、座席に座る女性の髪の毛や手を触るという方法だ。

 

「その位置から頭のてっぺんを触る。座席のところに棒が立ってるけど、その棒に股間をくっつけて、擦り付けてた」

 

 東海道線の下り電車でこれを繰り返すことで養われていったのは“隙のある女性を見極める”感覚だった。そして目の肥えた栗田被告がもうひとつ見えるようになったのが「同業者」たちだ。同じように眠っている女性に対してわいせつ行為を繰り返す男たちが、栗田被告以外にもいるのだ。この一人から「酔った女性をお持ち帰りしてわいせつ行為をする」様子を撮影した写真を見せられたのが一連の事件に至るきっかけだった。接見室のアクリル板越し、少し得意げにも見える様子で栗田被告はこう語る。

 

「睡眠薬を使い始めたのは7年前から。家に連れて帰れたのは300件以上。未遂を入れると倍以上。捕まる3〜4ヶ月前ぐらいからはもう百発百中で、(連れ帰れそうな女性の)見極めがついてて、歯止めがきかなかった。それまでは、服を脱がせるってとこまではやってなくて、髪を触る、服の上から胸を触るぐらいだったけど行動がおかしくなっていって、(自分から)病院に行こうと電話したりしてたところだった」

 

 つまりまだまだ被害者はいるということだ。睡眠薬を飲まされたため、自分が何をされたのか分かっていないまま、生活を続けている女性もいるだろう。

 

 栗田被告は性的嗜好に問題があることは自覚している。そして彼は「里親は俺の髪の毛のことに対して何もしなかった……」と、里親を恨み続けている。「厳しかった。俺のしたことに対して『変わってる』って言って何度も怒った」という里親は、常日頃から15歳での自立を子供に求めていたという。だが、それより2年早い13歳の頃、栗田被告は施設に戻されてしまった。その原因は「同級生女子のジャージを複数回盗んだこと」だったらしい。栗田被告の中で里親は“子供の危険な性的嗜好をうすうす知りながら、育てることを放棄した”存在となっており、今も面会のたび「なんで俺を家から出したのか」と繰り返している。

 

 栗田被告は面会取材に際し「1ヶ月に5冊、写真集を差し入れる」ことを要求してきた。指定してくるのは決まって「黒髪ロングの女性の写真集」。彼はこれを「治療のため」と言うが、性的欲求を満たすためであることは容易に想像できる。差し入れが遅れた時には手紙や面会で催促を重ねてくる。8月には「もう今月分で終わりで良い」と自分で言ったにもかかわらず、翌々月には「やっぱりまた頼みたい」と勝手に5冊指定してきた。

 

 面会取材を重ねる間、公判は遅々として進まなかった。再逮捕による追起訴が続いたうえ、栗田被告は精神鑑定に付されたのである。そして、初公判から2年が過ぎた今年の10月1日、ようやく懲役16年が求刑された。11月6日に言い渡された判決は懲役15年。

 

「精神鑑定は『フェティシズム障害』って結果が出た。治療に対する意識が高いうちにやらないと」とは言うものの、こうも語るのだ。

 

「やり方とか、快感とか知ってるから、そりゃやるよね。やんないって、断言できない。コトの始まりは5歳からだから。ここ(拘置所)にいるからやれないんであって、外は自由だから、やるでしょ。だから俺は管理されたところにいないとダメなの」

 

 被害女性への贖罪意識などまるでなく、あくまで自己中心的。矯正は不可能と開き直っている。こんな栗田被告にもやがて出所の時が来る。

 

引用元

https://news.biglobe.ne.jp/entertainment/1106/sgk_181106_3512523015.html

髪の毛触っているだけって、それもそれで怖いですね。

たまに変なフェチの人もいますからね。